個人再生で住宅ローンは残せるのか?
個人再生は法律に従って、借金を大幅に減らし3年計画で返済していく債務整理ですが、この個人再生の大きなメリットは「ローン支払い中の家を手放さずに利用できる」ことです。(民事再生法196条以下)
「住宅ローン特則(住宅資金貸付債権の法則)」(民再198条1項)を利用することで可能です。
ただし、住宅ローン特則を利用する場合、住宅ローンそのものの減額はありません。ローン支払い中のマイホームを残しながら個人再生をする場合以下のような返済になります。
@個人再生によって減額された借金を3年かけて分割返済していく
A住宅ローンの支払いはそのまま月々行う
個人再生で住宅ローン特則を利用した時の月々の支払いは「住宅ローン+再生計画案の支払額」になるのです。支払いの負担は大変大きいです。住宅ローンの支払いはそのままで、それに加えて個人再生で減額した借金を3年かけて返済していく必要があります。
この2つの支払いができる、それだけの安定した収入がある方でないと再生計画案は認可されません。返済能力の有無が裁判官に厳しくチェックされることになります。
個人再生は「支払い可能な返済計画」でないと、裁判官は認可しません。ですから、住宅ローン特則を利用する場合は、通常の個人再生に比べてさらに厳重な審議がされます。
毎月支払う金額が用意できない人は住宅ローン特則を利用できないので、注意が必要です。
住宅ローンであれば住宅資金特別条項は必ず利用できる?
一般的に住宅ローン(住宅の建設もしくは購入に必要な資金で、分割払いの定めのある債権であること)と呼ぶことができても、住宅資金特別条項の利用には細かい法律上の条件があります。
主な条件は以下の4点です。
※以下の条件以外にもいろいろな条件があり、複雑で判断が難しい場合もあります。住宅資金特別条項に関しては自己判断はせず、必ず専門家(弁護士、司法書士)の意見を聞いて実行する必要があります。
@住宅ローンに抵当権が設定されていること
A不動産に住宅ローン以外の抵当権が設定されていないこと
B本人が所有している住宅であること
C会社の住宅ローン肩代わり(代位弁済)から6カ月以内であること
@住宅ローンに抵当権が設定されていること
住宅ローンを抱えている人のほとんどは、不動産に抵当権が設定されています。抵当権とは住宅ローンでお金を借りたときに、家を担保として確保しておくためのものです。
簡単に言えば、住宅ローンの支払いができなくなった時は、抵当権として設定された家や土地を取り上げますよ、と契約できる権利です。建物に銀行や保証会社に抵当権が設定されていない住宅ローンは住宅資金特別条項を利用できません。
A不動産に住宅ローン以外の抵当権が設定されていないこと
住宅ローンの債権者が、抵当権を設定する際に、住宅ローン以外の債権を担保するための抵当権を設定していることがありますが、この場合住宅ローン特則は利用できません。
これは不動産の登記簿謄本を見れば誰でもわかります。登記簿謄本は誰でも取り寄せ可能です。登記簿謄本は「表題部」「権利部(甲区)」「権利部(乙区)」という3つの項目があります。
「権利部(甲区)」には所有権が誰にあるのか、差し押さえはされているのか、などの情報が載っています。
「権利部(乙区)」に抵当権の記載がありますので、そこで「抵当権が設定されているか」「住宅ローン以外の抵当権が設定されていないか」確認を取るとよいでしょう。登記簿謄本の見方がわからない場合、弁護士事務所(司法事務所)に持っていくと、確認を取ってくれます。
B本人が所有している住宅であること
住宅資金特別条項を定めることができる住宅とは、「本人が所有し、本人の居住用の建物で、その床面積の1/2以上に相当する部分が自己の居住用であること」とされています。
本人が所有している住宅で、実際にそこで生活している(もしくは生活する予定である)ことが条件です。別荘やセカンドハウスの場合には、住宅ローン特則使えません。
単身赴任など実際に住んでいなくても、住む予定があれば、住宅ローン特則は使えます。もし2世帯住宅など共用している場合、建物全体の床面積の合計2分の1以上を使用していないと住宅ローン特則は使えません。
C保証会社の住宅ローンの肩代わり(代位弁済)から6カ月以内であること
住宅ローンに滞納がない場合は全く問題ありません。これは住宅ローンを滞納している場合です。住宅ローンが支払えなくなると、銀行など保証会社に住宅ローンの支払いを請求します。
その請求に応じて、保証会社は住宅ローンの肩代わりをします。これを「代位弁済」と言いますが、住宅ローンの肩代わりから6カ月が過ぎると、住宅ローンの債権者が保証会社に代わります。
こうなってしまえば、住宅ローン特則は使えません。もし住宅ローンを滞納している場合でも、代位弁済が始まって6カ月以内でしたら住宅ローン特則は利用できます。
マイホームを残して個人再生をする場合、住宅ローン特則を利用することになるので、利用しない時と比べて弁護士費用は10万円ほど高くなります。
個人再生をすると7年間〜10年間はブラックリストに登録されるので、その期間は新しい住宅ローンを組むことができません。
ブラックリスト情報が解除されると、住宅ローンは組めるようになります。
住宅ローン特則を利用するには、「住宅ローン+月々の返済ができる」「住宅ローンに抵当権が設定されている」「住宅ローン以外の抵当権が設定されていないこと」「本人が所有し、本人の居住用の建物であること」「住宅ローンに滞納がないこと(滞納していても6か月以内なら可能)」が条件です。
抵当権の確認は「登記簿謄本」の「権利部(乙区)」を見るとわかります。
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